タイの地方都市、ブリーラム在住のムーランです。
タイに暮らして数年。
市場の賑わい、スパイシーなローカルフード、そして人々の優しい笑顔は、今では私の日常です。
そんなある日、「私は本当にタイのことを知っているのかな?」とふと思いました。
その答えを探すきっかけになったのが、アユタヤ近郊にある「バンパイン宮殿」。
西洋と東洋の建築が美しく融合し、かつての王たちの美意識が息づく庭園は、静かにタイの歴史を語りかけてくれる場所でした。
このブログでは、そんなバンパイン宮殿の歴史や見どころ、訪れるときの服装マナーや注意点を、私の体験を交えてご紹介します。
アユタヤ観光の一環として立ち寄るのにもぴったりのスポットなので、タイ旅行を計画中の方はぜひ参考にしてみてくださいね。
Contents
バンパイン宮殿ってどんなところ?

バンパイン宮殿は、バンコクから北へ約60km、アユタヤへ向かう途中に位置する美しい王室の離宮です。チャオプラヤー川沿いに広がる広大な敷地には、タイ様式・中国様式・西洋様式が調和した建築が点在し、まるで絵画のような風景が広がります。
見どころのひとつは、湖の上に浮かぶように建てられたタイ伝統様式のパビリオン「アーサナ・パー・サー・ナコン」。
繊細な装飾が施され、写真映えも抜群です。
また、中国様式の「ウィハーン・プラ・チュムポン・ニウェート宮殿」では、赤と金の鮮やかな色彩や中国風の調度品が印象的。
タイと中国の文化交流を感じられます。
さらに、西洋建築の要素を取り入れた「プラ・ティナン・ウェーハート・チャムルーン」など、多彩な様式の建物が揃い、散策しながら異文化の融合を楽しめます。
現在も王室行事や迎賓施設として使われているため、公開エリアは限られていますが、手入れの行き届いた庭園や建物群を静かに楽しめるスポットです。
バンパイン宮殿の物語

バンパイン宮殿の始まりは17世紀、アユタヤ王朝時代にさかのぼります。プラサート・トーン王(在位:1630〜1656年)が王族の避暑地として建てたのが最初です。
しかし、アユタヤ王朝が1767年にビルマ軍(現在のミャンマー)によって滅ぼされると、宮殿は長い間放置され、廃墟となっていました。
現在のように美しく再建されたのは19世紀。近代化を進めたラーマ4世と、その意思を継いだラーマ5世(チュラーロンコーン大王)の時代です。特にラーマ5世はヨーロッパ諸国を視察し、西洋文化を積極的に取り入れたことで知られています。
その影響はバンパイン宮殿にも色濃く表れ、タイ様式、中国様式、フランスやイタリアなど西洋建築が融合したユニークな宮殿が誕生しました。
バンパイン宮殿は、タイの伝統と他文化が調和した美しい建築だけでなく、タイが独立を保ってきた歴史的背景を感じられるスポットでもあります。
観光とあわせて、ぜひその歴史にも注目してみてください。
おすすめのスポット

アイサワン・ティッパヤー・アート宮殿
バンパイン宮殿を訪れると、まず視線を奪われるのが、湖の中央に優雅に佇む黄金の東屋「アイサワン・ティッパヤー・アート宮殿」です。
まるで水面に浮かんでいるような幻想的な姿は、写真好きなら思わずシャッターを切りたくなるほど。
訪問の際はぜひカメラをお忘れなく。
この建物は、かつて国賓を迎えるための格式ある迎賓施設として使われていた由緒あるもの。
タイ伝統様式が細部まで丁寧に再現されていて、屋根の反りや彫刻なども間近で見るとその美しさに思わず見入ってしまいます。
湖を渡るように架けられた小さな橋を歩いていると、角度によって景色が移ろい、まるで風景そのものがゆっくりと動いているかのよう。
自然と建築が一体となったこの光景は、まさにバンパイン宮殿ならではの魅力です。
ウェート・パトゥム・ワット宮殿
バンパイン宮殿内を散策していると、ひときわ目を引くのが、中国宮殿のような雰囲気をまとった「ウェート・パトゥム・ワット宮殿」。
赤と金の鮮やかな配色が青空に映え、敷地内でも異彩を放つ存在です。
ラーマ5世が中国からの贈り物の建材をもとに、中国人の職人を呼び寄せて建てさせたというだけあり、その完成度は驚くほど本格的。
中に入ると、豪華な漆塗りの家具や繊細な彫刻、天井に描かれた中国神話の壁画など、まるで本場の宮廷を訪れたような気分が味わえます(※見学の際は靴を脱ぐ必要があります)。
タイと中国、それぞれの美意識が絶妙に融合した空間は、異国情緒を楽しみたい方にはぴったり。
静かな庭園の中で、まるで時が止まったかのような優雅なひとときを過ごせますよ。
プラ・ティナン・ウィトゥン・タサナー
バンパイン宮殿を歩いていると、思わず足を止めたくなるのがこの塔。
赤と黄色の縞模様がぱっと目を引きます。
西洋の灯台を思わせる姿で、よく見るとポルトガル風のデザイン。
ラーマ5世の時代に建てられたもので、王様がここで景色を眺めていたとか。
中は螺旋階段になっていて、登っていくと最上階から庭園や池がぐるっと見渡せるんです。
風が抜けて気持ちよくて、しばらくぼーっとしてしまいました。
タイ、中国、西洋――それぞれの文化が混ざり合うバンパイン宮殿の中でも、この塔はちょっとした異色。けれど不思議と全体に溶け込んでいて、まさに“多文化の宮殿”を象徴する場所でした。
ホーエン・モンティアン・テラワット
華やかな建物が並ぶ宮殿内で、ふと静けさに包まれる場所がありました。
小さな丘の上にある、石造りの仏堂「ホーエン・モンティアン・テラワット」です。
クメール様式の建築で、尖った塔や重厚な石のデザインが印象的。
アンコール・ワットを思わせるこの建物、実はラーマ5世が王室のために建てたそう。
周囲はとても静かで、人の気配も少なく、しんとした空気が漂っていました。
あちこち歩き疲れたときにふらっと立ち寄るのにぴったりで、気がつくとしばらくここで座っていたくなる、そんな場所です。
プラ・ティナン・ワロパット・ピマン
王室の居館で、ラーマ5世が滞在時の執務や儀式に使用した建物。
左右対称の美しい外観を持ち、フランスのネオクラシカル様式を基調としつつ、尖塔風の窓枠や装飾にゴシック・リバイバル様式の要素も見られる、折衷的な西洋建築です。
白い外壁と整えられた庭園に囲まれたたたずまいは優雅で、王室の洗練された趣を感じさせます。
内部は非公開ですが、外観だけでも見ごたえ十分。
タイの近代化の中で、西洋建築を柔軟に取り入れた時代の象徴ともいえる一棟です。
ワット・ニウェート・タンマプラワット
バンパイン宮殿からチャオプラヤー川を挟んだ対岸に、ちょっと不思議なお寺があります。
パッと見はヨーロッパの教会。
でも中に入ると、仏像がどっしりと鎮座している。
それが「ワット・ニウェート・タンマプラワット」です。
ステンドグラスに尖塔、ゴシック建築の装飾まで施されたその外観は、まるでタイに迷い込んだ西洋の聖堂。
けれどこれはれっきとした仏教寺院で、ラーマ5世が西洋文化を積極的に取り入れた時代の産物です。
お寺へは、川を渡るロープウェイに乗って行きます。
わずか数分ですが、このちょっとした移動も旅の楽しさを演出してくれます。
「普通じゃないタイ」を求める方に、ぜひおすすめしたいスポットです。
おすすめの季節

タイ旅行を考えるとき、「どこに行くか」と同じくらい大切なのが「いつ行くか」。
特にバンパイン宮殿のように広々とした庭園や屋外建築を楽しむ場所は、季節選びで快適さが全然違います。
タイの気候は大きく3つに分かれていて、それぞれ違った魅力があるんです。
乾季(11月〜2月)|歩いていて気持ちいい、ベストシーズン
この時期のタイはとにかく過ごしやすい。
日中は半袖でちょうどよくて、朝晩は少し涼しいくらい。
湿度も低くて空気がカラッとしていて、庭園を歩いていても全然疲れないんです。
空の青と建物の白や赤が本当にキレイに映えるので、写真もいい感じに撮れます。
観光客はちょっと多めだけど、朝イチ(9時オープン)を狙えば、比較的のんびり見て回れますよ。
暑季(3月〜5月)|暑いけど、景色はまぶしいくらい鮮やか
この時期は、ほんとに暑いです。
日中は35度を超える日が続いて、外を歩くのも体力勝負。
でも、庭園の花や池の水面がキラキラ輝いて、写真映えは抜群。
個人的には、光と影のコントラストが一番きれいに出る季節だと思います。
おすすめは、朝の涼しいうちにさっと見て、昼前にはカフェや室内へ退避。
水分補給、帽子、日焼け止めはマスト。
熱中症だけは本当に気をつけて。
雨季(6月〜10月)|人が少なくて、しっとり落ち着いた時間が流れる
「雨季」と聞くとちょっと不安になるかもしれませんが、実際には毎日ずっと降るわけじゃなくて、パッと降ってパッと止むことが多いです。
しかも午前中は意外と晴れる日も多くて、観光は全然できます。
雨上がりの庭園って、静かで、緑が深くて、空気もしっとりしてて…個人的にはかなり好きな雰囲気。
観光客も少なくて、自分のペースで見て回れるのもいいところ。
折りたたみ傘と歩きやすい靴、虫よけスプレーがあれば、特に困ることはないと思います。
どの季節に行っても、それぞれの良さがあります。
暑いのが平気なら暑季の光と花を楽しめるし、静かに建物や庭園を見たいなら雨季もおすすめ。
もちろん、快適に過ごしたいなら乾季が一番です。
「どの季節に、どんな景色を見たいか」で選んでみてくださいね。
おすすめの行き方

電車で行く|ローカル感を楽しみたい人におすすめ
旅そのものを楽しみたいなら、電車移動が断然おもしろいです。
出発はバンコクの新しい中央駅「クルンテープ・アピワット」から。
1時間半ほどで「バンパイン駅」に到着します。
ローカル列車なら20〜30バーツ(100円以下!)という安さも魅力。
駅から宮殿までは2kmほど。
私はトゥクトゥクで行きましたが、徒歩でも行ける距離です。
のんびりと車窓を眺めていると、観光地とはひと味違う“タイの日常”が見えてきます。時
間に余裕がある方や、少し冒険気分を味わいたい方にぴったり。
注意点としては、帰りの電車の時刻は事前にチェックしておくと安心です。
タクシー・配車アプリ|快適&スムーズに行きたい人向け
「暑い中歩きたくない」「体力温存したい」なら、車移動が正解。
バンコク市内からバンパイン宮殿までは、通常1時間ほど。
タクシーだと700〜1,000バーツが相場、配車アプリなら料金の目安も事前にわかって安心です。
エアコンの効いた車内で涼みながら移動できるのは、本当にありがたい。
友人や家族と割り勘すれば、コスパも悪くありません。
3. ツアーに参加する|安心・効率重視ならこの方法
「はじめてのタイで移動に自信がない」
「せっかくならアユタヤ遺跡も一緒に回りたい」
そんな方には、日帰りツアーがぴったり。
私も一度、日本語ガイド付きのツアーに参加しましたが、建物や王室の歴史をじっくり聞けてとても満足感がありました。
移動・チケット・食事まで全部おまかせできるので、スケジュール管理が苦手な人にもおすすめです。
料金は1,500〜3,500バーツ程度(内容次第)。
複数の観光地をまとめて効率よく見たい人には理想的なプランです。
行き方 | 所要時間 | 料金の目安 | 特徴 |
電車 | 約1時間20分 | 20〜30バーツ(約60〜100円) | 安くてローカル体験、時間に余裕がある人におすすめ |
タクシー / 配車アプリ | 約1時間〜1時間半 | 700〜1,000バーツ(約2,800〜4,000円) | 快適で直行できる、グループに最適 |
ツアー | 約8〜10時間 | 1,500〜3,500バーツ(約6,000〜14,000円) | ガイド付きで安心&効率的に観光できる |
どの方法も一長一短ありますが、旅の目的やスケジュール、同行者の有無によってベストな選択肢は変わってきます。
私が初めて訪れたときは、電車で行ってローカルな雰囲気を楽しみ、帰りは疲れてGrabを使いました。
そんなふうに、行きと帰りで手段を変えるのもありだと思います。
バンパイン宮殿の開園時間・入場料・回り方

開園時間・入場料
バンパイン宮殿を訪れたとき、事前に開園時間などをしっかり調べておいて本当に助かりました。
というのも、開園時間は朝8時30分から夕方4時30分までで、最終入場は午後3時30分。
意外と早く閉まるので、午後遅くに行くと見学時間が短くなってしまうんです。
お勧めは、平日の朝の開園直後。
人も少なく、静かでとても贅沢な気分が味わえます。
入場料は100バーツ(約400円)で、入り口のチケット売り場で簡単に買えます。
ちなみに、タイ国民は無料。
また、現地では4人乗りのカートを1台400バーツ(約1,600円)でレンタルできます。
暑い日やご年配の方、小さなお子さんがいる方にはとても便利です。
バンパイン宮殿を効率よく巡るためのルート案
バンパイン宮殿は、敷地面積なんと東京ドーム約3個分。
徒歩でも回れますが、暑さ対策と時間短縮のため電動カート(有料・入口で手配可)の利用もおすすめ。
ここでは、見どころを効率よく押さえたルートをご紹介します。
【START】① 入口ゲート(チケット売り場・カート受付)
入場券とカートを手配。トイレもここで済ませておくと安心。
② プラ・ティナン・ワロパット・ピマン
ヨーロッパ建築好きなら外せない、王の迎賓殿。内部見学不可ですが、正面からの写真は午前中が順光で美しい。
(徒歩またはカートで約2分)
③ プラ・ティナン・アイサワン・ティッパアート
宮殿のシンボル。池に浮かぶ優美なタイ様式の東屋。
橋の上からの撮影がベストアングル。
(徒歩約3分)
④ ホー・ウィトゥン・タサナー(展望塔)
体力に余裕があれば登ってみて。
宮殿とチャオプラヤー川を一望できる隠れ絶景スポット。
(徒歩またはカートで約3分)
⑤ ウェート・パトゥム・ワット宮殿(中国風宮殿)
内部は撮影OK。
中国建築と王室コレクションの豪華絢爛さに圧倒。入口で靴を脱ぐので、履きやすい靴が◎
(徒歩数分)
⑥ ロープウェイ乗り場
チャオプラヤー川を渡る小さな無料ロープウェイ。
数分で対岸へ。
(約1〜2分)
⑦ ワット・ニウェート・タンマプラワット
まるで教会のようなゴシック様式の仏教寺院。
内部のステンドグラス風装飾は必見。
見学後、同じロープウェイで戻る
【GOAL】① 入口ゲート
これなら、建築・写真映え・タイらしさをしっかり楽しみながら、無駄なく巡れますよ!
もし時間がないなら、④展望塔と⑦寺院は省略してもOKです。
持ち物・服装・マナーのポイント

持ち物
必須!日差し&暑さ対策
- 帽子:できればつば広タイプ。顔も首もまとめて守れるものが便利。
- サングラス:眩しくて目を細めると写真写りもイマイチに。必須アイテム。
- 日焼け止め:特に首の後ろ・腕・手の甲は塗り忘れ注意。
飲み物
- ペットボトルの水:売店もあるけど、敷地が広いので常に手元に。2本持ちもアリ。
カメラ・スマホ関連
- スマホ&モバイルバッテリー:移動しながら写真・動画を撮るとすぐ電池切れ。私はモバイルバッテリー必携。
- スマホの容量チェック:意外と動画も撮りたくなるので、空き容量の確保も忘れずに。
- カメラ:絶景ポイントが多いので、一眼やミラーレス派もぜひ。
歩きやすさ重視の靴
- 履きなれたスニーカー一択。芝生・砂利・石畳・階段も多い。サンダルだと足が疲れる&滑る危険も。
- 脱ぎ履きしやすい靴ならなお◎。寺院エリアで靴を脱ぐ場所あり。
服装のマナーと暑さ対策
バンパイン宮殿は王室の施設。
タイの寺院と同じく、服装チェックがあり、肌の露出はNG。
- 肩と膝が隠れる服装
→ 男性:Tシャツ+長ズボン
→ 女性:ロングスカート/マキシ丈ワンピース/ワイドパンツがおすすめ - 通気性のいい長袖 or 薄手のカーディガン
→ 日焼け&冷房対策に。私は薄手のカーデが大活躍。 - ストール
→ 日差し避け・冷房対策・マナー調整に万能。現地でお気に入りを探すのも楽しい。
入口の布レンタルは有料(20〜30バーツ)なので、事前に用意した方が快適です。
まとめ
バンパイン宮殿を訪れると、ついその美しい景色や建築様式に目を奪われがちですが、実はここ、タイという国の「誇り」と「知恵」が刻まれた場所です。
19世紀後半、ラーマ5世(チュラロンコン大王)の時代。
当時のタイは、周囲をイギリス・フランスといった列強に囲まれ、アジアの国々が次々と植民地化されていくなかで、唯一独立を守り抜いた国でした。
その背景には、ラーマ5世の巧みな外交と内政改革があります。
西洋の文化や技術を柔軟に取り入れつつ、タイの伝統と誇りを守り続けた王。
その意思が形になったのがこのバンパイン宮殿です。
敷地内には、様々な様式の建築物が調和するように建てられ、まるで「タイはどんな文化も受け入れ、独自の形で咲かせられる国だ」と世界に示しているよう。
それは単なる観光スポットではなく、「独立国としての誇りと柔軟さ」を語る歴史の証人でもあります。
この背景を知ると、現代のタイ人がなぜ王室を大切にし、異文化を上手に取り入れながらも自国の伝統を誇りにしているのか、その理由も自然と見えてくるはず。
美しい庭園を歩きながら、ぜひ